2011年04月03日

これからアーティストの道を歩む君たちへ

平成23年度 入学式 
受験生、基礎科生諸君へ

 那覇造形美術学院は今年で開校10周年を迎えます。この10年間で沖縄県立芸術大学に320名、全国芸大・美大を含めると672名もの合格者を輩出してきました。更に大学を卒業し、美術教師やデザイナー等として社会で活躍している卒業生も多数おります。

 過去10年間で受験を取り巻く状況は大きく変わりました。少子化による影響で入学者定員と受験者数が同数になる大学全入時代に突入した為、AO入試という推薦入試の新たな形態の導入や、センター利用入試など、様々な形に変化しています。
 また、高等学校での美術授業の削減により、イメージを形にしていく楽しさを知る機会、様々な素材に触れる機会が減り、美術への興味が薄れてきている事も芸大・美大進学者の減少をもたらしているように思えます。
 その結果、全体としては芸大・美大に進学する事は容易になり、何浪もしなければ合格出来ないという事は少なくなりました。

 しかし、一方では東京藝術大学や武蔵野美術大学、多摩美術大学といった大学の入試実技レベルは非常に高く、より専門的で高度な実技力が要求されることも事実です。またそのレベルに達するには、長い時間をかけて修練し、アーティストとしての高い意識を身につけていく事が重要となります。この事は志望校の難易度にかかわらず、全国の美術系大学の入試に挑む学生にとっても、非常に大切なことです。

 なぜなら芸大・美大進学は、美術に関わる仕事に就くという夢を実現する為の通過点でしかなく、将来作家やデザイナーとしてしっかりとした仕事をするには感性を磨き、高い造形力を習得しなければならないからです。
 その為には、ものを作る事、自己表現する事の難しさを知り、絶えず高い実技レベルを目指す。日頃から鋭い観察力で日常生活を視る。微細な変化に目を向ける。そしてそれらを認識する、実感する。このような経験の中からアーティストとしての自覚、意識が養われていきます。
 作品とは制作者の意識の現れであり、意識無くして良い作品は生まれません。高い意識が高い実技力を生み、高い意識を持った者同士が入試で競い合い、表現として強いものが結果的に合格を勝ち取るのです。これは作家やデザイナーにとっても同じ事です。

 アーティストとしての高い意識を得る事は決して簡単な事ではありませんが、美術が好きであればこそ、日々の鍛錬に耐え経験を重ね、自らの意識を高めていけるはずです。そしてその努力の結果が、志望校合格という形として現れます。これは、一つの大きな壁を乗り越えられたという大きな自信に繋がります。この時得た自信は、その後更なる壁にぶつかった時、乗り超える為の力にもなります。
 当然この鍛錬はここで終わりではありません。大学で専門技術や知識を学ぶ時も、その後の作家やデザイナーとして活動していく時にも常に必要な事です。
 私自身も予備校で学んだ事が、出発点となって今の仕事に活かされています。

 だからこそ此処、那覇造形美術学院で「アーティストとしての意識を育てたい」と思うのです。これが私たちの教育の指針です。
 ここで学ぶ実技学習は、将来の夢へと繋がっているのです。

 私たちはこれまでの10年の間に蓄積してきた造形指導のノウハウを活かし、しっかりとした造形の基礎力を養い、アーティストとしての意識を育んでいけるよう指導していきたいと思います。
 そしてさらに10年後には、巣立っていった若きアーティスト達が、この社会で活躍している事を願っています。

平成23年4月3日
那覇造形美術学院 学院長
黄金忠博




Posted by nahabi at 17:05│Comments(1)学院長より
この記事へのコメント
黄金学院長!!すばらしいですね。
共感しました。
Posted by littailittai at 2011年08月10日 18:21
 
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